「あなたの介護観は何ですか?」

そう聞かれて、すぐに答えられるでしょうか?

介護観とは、簡単にいうと
「自分はどんな介護をしたいのか」
「介護で何を大切にしたいのか」
という考え方です

介護の仕事をしていると

  • 利用者さんのために、もっとこうしてあげたい
  • あの職員の介護は、自分の考え方とは違う気がする
  • 会社の方針と、自分のやりたい介護が合わない

と感じることがあります

こうした気持ちの背景には
それぞれの「介護観」が関係しているかもしれません

介護観を持つことは、自分らしい支援を考えるきっかけになります

一方で、自分の考えにこだわりすぎると、職員同士のトラブルや職場への不満につながることもあります

僕は特別養護老人ホームで10年間勤務した後
児童発達支援や放課後等デイサービスでも支援に携わってきました

さまざまな福祉の現場を経験する中で
僕自身の「介護観」も少しずつ変化してきたことも感じています

この記事では

  • 介護観とは何か、具体例を交えた解説
  • 自分なりの介護観を見つける3つのステップ
  • 面接やレポートで使える介護観の例文
  • 職員同士や会社と介護観が合わないときの対処法

について、現場経験をもとにわかりやすく解説します

介護観は、立派な答えを用意することよりも
自分が大切にしたい支援を考え続けることに意味がある

僕はそう考えています

介護観とは「介護で何を大切にするか」という自分なりの考え方

介護観って、そもそも何?

と思う方もいるのではないでしょうか

介護観とは
介護をするときに、自分が何を大切にしたいと考えているか
という価値観や考え方です

たとえば、利用者さんに対し

  • 本人の意思をできるだけ尊重したい
  • 自分でできることは続けてもらいたい
  • できるだけ安全に過ごしてほしい
  • 穏やかに生活してほしい
  • 家族目線での支援が大事だ
  • 最期までその人らしく過ごしてほしい

といった、自分に湧き上がる考えが「介護観」と考えてください

日本介護福祉士会の倫理綱領では
「介護福祉士は利用者本位の立場から自己決定を尊重し、自立に向けた支援を行う」ことが示されています
倫理基準では「自分自身の価値観に偏らず利用者の自己決定を尊重する」ことも明記されています

この
「自立支援のため」に行う介護
「自己決定の尊重のため」に行う介護の手段や手法
ですが
利用者さんを「手伝う」「手伝わない」の観点でいうと
非常に判断が難しいです
正解はないと言ってもいいかもしれません

介護士として
自立のために「手伝わない」という選択は時に正論と言えますし
気持ちの尊重のため「手伝う」という選択も、時に正解と言えます

大切なのは
「自分はなぜ、それを大切だと思っているのか」
まで掘り下げて考えてみることです

自分の介護観は大切にしながらも
本人の尊厳や権利、専門的な根拠に基づいて支援することが必要になります

「自分はこういう介護が好きだから」
という理由だけで支援を決めるのではなく
「本人にとって本当に必要な支援なのか」
を考えることが、専門職として大切な姿勢です

介護観とは「介護のものさし」と考えるとわかりやすい

たとえば
利用者さんが着替えをしていて、なかなか袖に腕を通せずに苦戦している場面があったとします

ある職員は
「時間がかかっているから手伝おう」
と考える

別の職員は
「もう少し待てば自分でできそうだから見守ろう」
と考える

また別の職員は
「今日は疲れているみたいだから、いつもより多めに手伝おう」
と考えるかもしれません

同じ利用者さん
同じ着替え
同じ場面

それでも判断が違います

そこには

  • 安全をどれくらい重視するか
  • 自立をどれくらい大切にするか
  • その日の体調や状態をどう見るか
  • どこまで待つか
  • どこから手伝うか

という、その人なりの判断があります

職員として自分なりに
「何を大切にして、どこを判断基準とするか」
自分自身の「ものさし」を持っている状態
それが「介護観を持つこと」である
と考えてください

一概に「どれが正解」と言えないのが介護

次にたとえば、歩行が少し不安定な利用者さんがいたとします

安全を重視すれば
「転倒すると危ないから近くで介助しよう」
と考えるかもしれません

自立を重視すれば
「できるところまでは自分で歩いてもらおう」
となるかもしれません

本人の意思を重視すれば
「まず本人がどうしたいのか確認しよう」
となるかもしれません

どれが正解とは決められません
介護は、本人の身体状況、認知機能、生活歴、その日の体調、本人の希望などによって
必要な支援が変わるからです

自分なりの介護観を持ちながらも
「自分ならこうする」だけで支援を決めない
ことが大切です

「自分の介護観」の見つけ方|湧き上がる感情にヒントがある

介護観を持つことは介護士として大事なことです

そう言われると

尊厳を大切にします!

自立支援を心がけます!

利用者本位の介護をします!

のような模範解答を持っていたくなるかもしれません

もちろんどれも大切ですが
本質的な「自分の持つ介護観」を知ることもとても大切です

たとえば

  • 「何でも職員がやってしまう介護にはしたくない」
  • 「忙しくても、本人の話を無視したくない」
  • 「安全を理由に何でも禁止するのは違う気がする」

というように

働きながら湧き上がってくる感情こそが、その人の介護観の根幹であり本質
であると、僕は考えます

現場で感じた「これってどうなんだろう?」という小さな違和感が
自分の介護観を知るきっかけになることもあります

自分なりの介護観の見つけ方|3つのステップ

① 現場で感じた喜びや違和感を振り返る

まず、日々の仕事で印象に残った場面を振り返ってみましょう
たとえば

  • 利用者さんが自分でできたとき、うれしかった
  • 「忙しいから」と相手の話を途中で切り上げることに違和感があった
  • 本人の希望を聞かずに支援が決められたことに疑問を感じた

こうした感情には、自分が介護で大切にしていることが隠れているかもしれません

② なぜそう感じたのか掘り下げる

次に「なぜそう感じたのか」を考えます

たとえば
「相手の話を途中で切り上げることが嫌だった」
という場合
なぜ嫌だったのでしょう?
↓
「本人の気持ちを大切にしたいから」
という感情が湧いたからかもしれません

さらに、なぜ大切にしたいのでしょうか?
↓
「自分が介護を受ける立場だとしたら、自分の意思を尊重してほしいと思うから」
なのかもしれません

このように考えを掘り下げることで、自分が大切にしている価値観が見えてきます

③ 自分が大切にしたい介護を言葉にする

最後に、見つけた考え方を短い文章にしてみましょう

先ほどの例であれば
「僕は、利用者さん一人ひとりの思いや意思を尊重し、本人が納得できる支援を大切にしたい」

というのが「介護観」であると言えます

最初は一文だけでも十分です

その後に経験を積み
考え方が変わったら、文章を修正しても構いません

介護観は、最初から完成した答えを持つものではなく
自分の経験とともに育てていくものだと思います

自分の介護観を見つけるミニワーク|無料PDF

無料ワークシート|保存・印刷OK

自分の介護観を見つける3つの質問

介護の仕事で感じた喜びや違和感を振り返りながら、 あなたが大切にしたい支援を言葉にしてみましょう

① 印象に残った介護の場面は?

例:利用者さんが自分で着替えられて、うれしかった

② なぜ、そう感じたのでしょうか?

例:本人が持っている力を大切にしたいから

③ あなたが大切にしたい介護は?

例:本人の意思と可能性を尊重する介護

3つの質問を書き込めるA4ワークシートを無料で用意しました

📄 無料PDFを開く・保存する

会員登録・メールアドレス不要

介護観の例文|面接やレポートで使える伝え方

介護観は、転職の面接や研修のレポートなどで聞かれることもあります

「あなたの介護観は何ですか?」
と質問された時、難しい専門用語を並べる必要はありません

大切にしている考え方と
その理由や経験をセットで伝えることがおすすめです

面接で伝える場合の例文

たとえば、自立支援を大切にしている場合は、次のように伝えられます

私は、利用者さんが持っている力をできるだけ活かす介護を大切にしています

以前、着替えに時間がかかる利用者さんへの支援で、「すべて手伝えば早い」という考えには疑問を抱き、本人の意思を確認しながらあえて見守りを続けたことがありました

その経験から、必要な介助を行うだけでなく、本人が自分でできる機会を守ることも大切だと感じています

今後も、一人ひとりの状態に合わせた自立支援を心がけたいと考えています

このように、経験と考え方を組み合わせることで
自分なりの介護観が伝わりやすくなります
※例文は架空の事例です

研修・レポートで書く場合の例文

研修やレポートでは、具体的な経験に加えて
今後どのような支援につなげたいのかまで書くと、内容に深みが増します

私が大切にしている介護観は、利用者一人ひとりの尊厳と自己決定を尊重することです

介護現場では、安全確保や業務の効率を優先しなければならない場面もあります

しかし、そのような状況でも本人の気持ちを確認し、できる限り選択する機会を設けることが大切だと考えています

今後は、利用者の身体状況や生活歴を理解し、本人の意思を尊重した支援を実践していきたいです

もちろん、例文をそのまま使うよりも、自分の経験や気持ちに置き換えることが大切です

介護観に唯一の模範解答があるわけではありません

自分が何を大切にしているのか、なぜそう考えるのかを
自分自身の言葉で伝えてみましょう

介護観は経験によって変わってもいい

介護観は、一度決めたら一生変わらないものではありません

新人の頃は
「失敗しないように全部手伝った方がいい」
と思っていた人が経験を積み
「失敗することも含めて、自分でやる経験を残した方がいいのかもしれない」
と考えるようになることもあります

さらに経験を積むと
「でも、大きな事故につながる場面では支援が必要だ」
と考え方が変わるかもしれません

人を支援する仕事だからこそ、毎回同じ答えが出るわけではありません

介護観は
経験を重ねながら少しずつ更新していくもの
と考えましょう

もちろんその中で「ずっと変わらない介護観」を持つことも
間違いとは言えません

僕自身の経験|福祉の仕事をする中で介護観が変わってきた

僕自身も
高齢者介護の仕事を始めた頃と現在では
支援に対する考え方が変わってきました

介護を始めたばかりの頃は
「できないところを手伝うことが介護」
くらいに思いながら働いていました

1年、2年と経験を積み
「手伝うことでその人の気持ちはどうなるか?」
「うれしいのか、くやしいのか?」
「家族の方はどう思うだろうか?」

の視点が身につきました

もちろん、その視点を持ったからといって
その時々で常に正解の介護が導き出せるようになったわけではありません
時と場合、利用者さんのその時の体調や気分により
正解が変わるのが介護です

ですが、少し先回りして考える視点を持つことで、
立ち振る舞いが変わります

僕

手伝いたい気持ちがあるけれど
少し頑張れば自分でできるはず
だから少し見守っているので
頑張ってください!


という想いは、言葉にしてもいいですが
しなくても表情や所作ににじみ出るものです

そしてそれは、利用者さんにも雰囲気で伝わることもあります

また、高齢者介護だけでなく
障がい福祉や児童発達支援、放課後等デイサービスでも働くようになり
「できないことを補う」だけでなく
「その人が持っている力をどう使えるようにするか」
という視点も、より意識するようになりました

違う分野を経験すると
それまで自分が当たり前だと思っていた支援を別の角度から見られることがあります

僕自身の介護観も
まだ完成しているとは思っていません
これから経験することや学ぶことによって、また変わっていくと思います

考え方を広げたり、掘り下げたりして「自分なりの介護観」をみつけると
仕事の楽しさ、やりがい、困った時の対処法の引き出しが増えることにもつながります

僕自身が考えている「資格×経験×選択肢」の広げ方については、こちらの記事で詳しくまとめています

人や会社と介護観がズレたときは、根拠や本人の意向に目を向ける

介護観は人によって違います

職員同士で

職員A

もっと手伝った方がいい!

職員B

いや、もう少し本人に任せた方がいい


と意見が分かれることもあります
あるいは自分の考えと
会社や事業所の理念・方針が合わないこともあるでしょう

そんなときは
「自分が正しい」
「相手がおかしい」
と言い合っても、落としどころはみつかりません
先に述べたように
「正解はないことが多いのが介護」だからです

まず前提として
「自分は介護で何を大切にしているのか」
という自分の「介護観」を理解します

そのうえで、職員同士や会社と「介護観」のズレがあると感じたら

  • なぜその支援をしているのかの根拠
  • 利用者本人の意向
  • 家族の意向
  • どんなリスクがあるか
  • 支援計画や事業所の方針

を確認しましょう
介護観が違っても、これらが明確になっていれば落としどころがみつかるかもしれません

日本介護福祉士会の倫理基準でも
自らの価値観に偏らず利用者の自己決定を尊重することや
根拠に基づく支援が求められています

それでも大きなズレが続く場合は、上司やチームで共有し
どこまで支援方針をすり合わせられるのかを考えてみましょう

介護観で本当に大切なのは
誰の考えが一番正しいかではなく
「利用者本人にとってどうなのか」に立ち戻ること
だと思います

介護観のズレは
働く中で「仕事を辞めたい」と感じるきっかけになることもあります

もちろん、辞めたい理由は介護観のズレだけとは限りません
人間関係や腰痛、収入など、いくつかの悩みが重なっていることもあります

「自分が介護職員として働くツラさはどこからくるのか?」
と感じている方は
介護職を辞めたくなる理由を4つに整理したこちらの記事も参考にしてみてください

「介護職の転職にはどんなメリット・デメリットがある?」の記事では
特養から障がい・児童福祉へ転職した実体験をもとに、辞める・残るで迷ったときの判断基準を解説
収入、人間関係、働き方、キャリアを整理し、自分らしく働くための選択肢を紹介しています
ぜひ参考にしてみてください

求人を探すときは「会社が大切にしている介護」も見ておきたい

もし、転職をしたとして
自分の介護観と、会社の理念がズレていたら困りませんか?
残念な気持ちになってしまうかもしれません
心機一転、転職をしたのに、そんなことにはなりたくないハズです

転職を考え求人を探すときは、給与や休日だけでなく
会社や事業所がどんな介護を大切にしているのか
も確認しておきたいところです

  • 会社や法人の理念
  • 事業所の支援方針
  • ホームページで発信している内容
  • 面接で聞いた支援への考え方
  • 見学したときの職員と利用者さんの関わり方

といった部分はできる限り確認しましょう

すべてが自分と一致する必要はありません
ただ
「この職場の介護なら、自分も納得して続けられそうか」
という視点を持っておくと、入職後の大きなズレを減らすヒントになります

介護観が違うこと自体は悪いことではない

介護現場には、年齢も経験も資格も違う職員が働いています
考え方が違うのは、ある意味では自然なことです
むしろ
「そんな考え方もあるのか」
と知ることで、自分の支援を振り返るきっかけになることもあります

問題になるのは

自分の介護観こそが正しい介護だ

になってしまったときです

そうではなく

自分の考えを持ちながらも
他の職員の考えを聞き
利用者本人の希望を確認し
必要なら自分の考え方も変える

こんな風に考えられると
広い視点に自分の考えをアップデートしていけますし
トラブルにもなりにくいです

介護観を持つというのは
自分の考えを固定することではなく
より良い支援を考えるための土台を持つこと
と考えましょう

まとめ|介護観とは「今の自分が大切にしている介護」

介護観とは
「自分はどんな介護をしたいのか」という、その人なりの考え方です

もっと簡単に言えば
自分の中にある「介護のものさし」と考えてもいいと思います

そして、そのものさしは一生同じである必要はありません

  • 利用者さんとの関わり
  • 失敗した経験
  • 先輩職員の支援を見ること
  • 違う福祉分野での経験
  • 新しく学んだ知識

こうしたものを通して、少しずつ変わっていきます

大切なのは
自分の介護観だけを「正解」にしないことです

利用者本人の希望があり
家族の思いがあり
一緒に働く職員がいて
会社や事業所としての支援方針があります

その中で
「自分は何を大切にしたいのか」を持ちながら
必要に応じて周囲とすり合わせていく視点を持ちましょう

介護観とは
介護の仕事を続けながら育てていくもの
でもあると思います

みなさんにとって、居心地の良い職場とは
「介護観の合う仲間がいる」
「介護観の合う会社で働く」
ことかもしれません

最後まで読んでくださった方
ありがとうございました

ABOUT ME
アバター
たじみっと
介護福祉・児童福祉・障がい者福祉 15年以上の現場経験から援助技術アドバイス、業務効率の向上、働き方や稼ぎ方の情報をお届け