「予定通り偶然に」

知る人ぞ知る、KANさんの曲のタイトルです

福祉とは関係なさそうな言葉ですが
僕はこのフレーズを聞くと
介護や福祉の現場で使ってきたある援助の方法を思い出します

特に

  • 認知症があり、不安が強い方
  • 知らない場所で混乱している方
  • 「助けてください」と自分から言うことが難しい方
  • 職員から積極的に声をかけられることを嫌がる方

こうした方への支援では
こちらから真正面に
「どうしましたか?」
「何か困っていますか?」
と介入することが、必ずしも最善とは限りません

そんなときに僕が意識しているのが

支援者にとっては「予定通り」
本人にとっては「偶然」

という関わり方です

僕なりに「予定通り偶然に」と呼んでいる援助方法を、具体例を交えて紹介します

知っていただくことで、支援の現場での引き出しが増えると思います
対処方法の引き出しは、大いに越したことはありません
ぜひ参考にしてみてください

「予定通り偶然に」とはどういうこと?

「予定通り」と「偶然」

一見すると矛盾している言葉ですよね

でも、支援する側と支援を受ける側を分けて考えると、成立します

支援者にとっては「予定通り」

本人にとっては「偶然」

たとえば
施設内を歩き回っている利用者さんがいたとします
表情や行動から

「何かを探しているのかな」
「場所が分からなくなったのかな」
「少し不安になっているのかもしれない」

と感じたとします

そこで、すぐに後ろから追いかけて

「どうしました?」
「どこに行くんですか?」

と声をかける方法もあります

もちろん、相手がそれで安心できる方なら問題ありません

でも、不安や警戒心が強くなっている方の場合
突然後ろから職員に追いかけられること自体が
新しい不安になることもあります

そこで僕なら、物理的に少し先回りしてみます

そして曲がり角などで
「あ、こんにちは」
と、自然に出会います

支援者である僕は
その方が来ることをある程度予測しています

だから僕にとっては「予定通り」

でも、本人からすれば
「歩いていたら、知っている職員に偶然会った」
という状況です

これが僕の考える
「予定通り偶然に」
です

なぜ「偶然」が役に立つのか

重要なのは
偶然そのものに特別な力があるわけではないということです

大切なのは
本人が支援を受け入れやすい状況を
職員側が先回りしてつくっておくこと

認知症のある方に限らず
不安が強くなっているときには、周囲の状況をうまく理解できなかったり
突然の声かけを負担に感じたりすることがあります

そんな状態で職員から

「何してるんですか?」
「こっちですよ」
「部屋に戻りましょう」

と次々に言われたら、本人にとってはどうでしょう

助けてもらっているというより
「知らない人に行動を止められた」
と感じる可能性もあります

一方で
歩いていた先で知っている職員に自然に出会い

「こんにちは」
「今日は暑いですね」

などと普通に会話が始まる

その流れの中で
「何か探していました?」
「よかったら一緒に行きましょうか」
と支援につなげる

同じ職員が、同じ人を助ける場合でも
支援への入り方が違います

僕が「予定通り偶然に」で大切にしているのは
この自然な入り口をつくることです

「困っているから助ける」だけではない

介護や福祉の仕事をしていると

困っている人を見つける
→声をかける
→助ける

と考えがちです

もちろん、それが必要な場面はたくさんあります

ただ、対人援助では
「どう助けるか」だけでなく「どう支援に入るか」も大切
だと僕は思っています

特に不安が強い方の場合
「助けられている」
「誘導されている」
「監視されている」
と感じるより

「ちょうど知っている人がいた」
という状況の方が安心して話せる場合があります

だから職員側が少し先を予測して
本人が安心して支援を受けられる場所やタイミングをつくります

これは僕の中では
「偶然を装ってだます」のではなく
「自然に支援を受けられる環境を整える」
という感覚に近いです

具体例|「家に帰りたい」と歩いている方

たとえば
認知症のある利用者さんが

「家に帰らなきゃ」

と言って廊下を歩いていたとします

すぐ後ろから追いかけて

「今日はここに泊まるんですよ」
「家には帰れませんよ」

と説明しても、不安が強くなることがあります

そこで、少し離れて様子を確認します

危険がないことを確認しながら移動する方向を予測し
先回りします

そして本人がやってきたところで

あら、○○さん

と自然に出会います

そこから

どちらまで?

アイコン名を入力

家に帰ろうと思って

そうだったんですね

と、まず話を聞く

必要なら

少しお茶でも飲みながら話しませんか?

と次の行動につなげていきます

もちろん、毎回うまくいくわけではありません

その方の認知機能、性格、その日の体調、不安の原因などによって対応は変わります

それでも

正面から行動を止める以外にも
支援への入り口はつくれる

この視点を持っているだけで、対応の選択肢は増えると思います

「予定通り偶然に」で大切なこと

この方法を使ううえで
僕が一番大切だと思うのは
職員の都合で本人を動かすために使わないこと
です

「言うことを聞かせるために偶然を演出する」
となれば、僕が伝えたい援助とは違います

目的はあくまで
本人の不安を減らし
安心して必要な支援を受けられる状況をつくること

そのためには、普段からその人を知っておく必要があります

  • 何に不安を感じるのか
  • どんな声かけなら安心するのか
  • 誰なら話を聞いてくれるのか
  • 困ったときにどんな行動をするのか

こうした日々の観察や関係づくりがあるからこそ

「このあと、あちらへ行くかもしれない」
「今は声をかけず、少し待った方がよさそうだ」
と予測ができます

つまり「予定通り偶然に」は
小手先のテクニックというより

観察
↓
予測
↓
環境調整
↓

自然な関わり

という一連の援助だと僕は考えています

まとめ|支援者が先回りして、本人には自然な支援を

福祉の現場では
正しいことを伝えれば、相手が安心してくれる
とは限りません

「大丈夫ですよ」
「私たちはあなたの味方ですよ」

そう伝えることも大切です

でも、言葉だけではなかなか伝わらないこともあります

そんなときは
相手が安心できる状況そのものをつくってみる

支援者は観察し、考え、少し先回りする

でも本人にとっては
ごく自然な出会いや出来事として支援が始まる

支援者には「予定通り」
本人には「偶然」

僕はこれも、対人援助における一つの工夫だと思っています

ただし
すべての方に使える万能な方法ではありません

本人の状態や意思を尊重し
安全を確保したうえで
数ある援助方法の一つとして使い分けることが大切です

介護や福祉の現場で
「どう声をかけても不安にさせてしまう」
と悩んだときには

「どう声をかけるか」だけでなく
「どうすれば自然に関われる状況をつくれるだろう?」
と考えてみてください

そうすると
援助の選択肢が、ひとつ増えるかもしれません

そしてこの記事を読んで「予定通り偶然に」という言葉が気になった方は
KANさんの曲もぜひ探して聴いてみてください

福祉の記事なのに、最後はKANさんの話になってしまいました 笑

最後まで読んでくださった方
ありがとうございました

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たじみっと
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