子どものゲーム依存が心配な家族へ|放課後等デイの支援現場で考える「やめさせる」以外の関わり方
放課後等デイサービスで働いていると
家族との懇談や相談の中で
家に帰るとゲームばかりしています
という相談をたくさん受けることがあります
そこから
- 外でも遊んでほしい
- ゲームをやめると怒る
- YouTubeもずっと見ている
- 何時間までならいいのかわからない
- このままゲーム依存にならないか心配
といった悩みも多く聞きます
僕自身
放課後等デイサービスなど児童福祉の現場で家族の相談を聞いてきましたが
この問題に対して
「ゲームをやめさせれば解決します」
とは、なかなか言えません
僕が大切だと思っているのは
ゲームをしている時間だけを見るのではなく
その子の生活全体を見ることです
この記事では医療的な診断をするのではなく
放課後等デイサービスなどの支援現場で家族からゲームについて相談されたとき
どのように整理して考えればよいのかを紹介します
「ゲームをたくさんする=ゲーム依存」とは限らない

まず
ゲームを長時間しているからといって
それだけで「ゲーム依存」「ゲーム障害」と判断することはできません
厚労省の資料では
WHOのICD-11にある「Gaming disorder(ゲーム行動症)」について
日本語で次の3点を整理しています
- ゲームをすることを自分でコントロールしにくい
- ほかの生活活動よりゲームを優先する
- 問題が起きてもゲームを続けてしまう
これらが、家庭・学校・社会生活などに重大な支障が生じていることを重要なポイントとしています
一般的には、上記の3点の状態が一定期間続いていることも診断上の判断材料になります
つまり
「1日○時間やったらゲーム依存」
という単純なものではありません
支援者としても
「ゲーム時間が長いですね。依存ですね」
と決めつけないことが大切です
大事なのは「ゲーム時間」より生活全体を見ること

家族から
「毎日3時間もゲームをしています」
と聞くと
どうしても「3時間も」という数字が気になります
ですが、もう少し生活全体についての話も聞きましょう
たとえば
- 朝は起きられているか
- 睡眠時間は確保できているか
- 学校には行けているか
- 学校ではどう過ごしているか
- 友達との関係はどうか
- 食事や入浴などの生活習慣はどうか
- 家族と会話できているか
- ゲーム以外に好きなことはあるか
- ゲームを終えるとき、どうやって切り替えられるか
などです
同じ「3時間ゲームをしている」という子でも
生活全体を見ると状態は全く違います
たとえばAくんの場合
学校から帰宅
↓
宿題
↓
夕食
↓
入浴
↓
ゲーム(3時間)
↓
時間になったら終了
↓
就寝
この場合
「ゲームが大好き」ではあっても
ゲームだけを問題として扱う必要があるとは限りません
一方、Bくんの場合
夜遅くまでゲーム(3時間)
↓
朝起きられない
↓
学校を休む
↓
昼間眠る
↓
夜になるとまたゲーム
↓
ゲームを止めようとすると激しく怒る
となっているなら
単純に「ゲーム時間を減らしましょう」だけでは不十分かもしれません
ゲームによって生活のどこに困りごとが出ているのか
を見ることが大切です
「ゲームを取り上げる」より先に考えたいこと

子どもがゲームばかりしている姿を見ると
親としては
「もうゲーム禁止!」
と言いたくなることもあると思います
もちろん家庭によってルールを決めることは大切です
ただ、支援者として家族の相談を聞くときには
「その子にとってゲームとは何なのか?」
ということも考えたい視点です
ゲームは単なる暇つぶしとは限りません
その子にとって
- 得意なこと
- 友達とつながる場所
- 達成感を得られる場所
- 嫌なことを忘れられる時間
- 安心できる居場所
- 自分が活躍できる世界
であるという可能性もあります
ゲームを取り上げることだけを考えると
本人からすると
「大好きなものを奪われた」
という経験になってしまうことがあります
だからこそ
やめさせることを考える前に
「なぜそこまでゲームをしたいのか」を知ろうとすることが大切です
ゲーム依存の専門診療を行っている久里浜医療センターでも
学校での居場所や家族関係、対人関係など
現実生活上の問題がゲームへの没頭の背景にあるケースがあるとされています
ゲームだけではなく
その背景を見る
これは福祉の支援にも通じる考え方だと思います
たとえば放デイでは「ゲーム以外の楽しいこと」がみつけられる

ゲームにハマる子どもに
「ゲームを減らそう」と伝えても
子どもからすれば、楽しいものが一つ減るだけで
やめる理由になりません
だったら
ゲーム以外にも楽しいものを増やす
という考え方をしたいところです
たとえば放デイの中では
- ボール遊び
- 工作
- カードゲーム
- クッキング
- 散歩
- 公園遊び
- 友達との遊び
- 得意なことを生かした活動
など、本人が「これも結構楽しいな」
と思える経験を増やしていける可能性があります
これは
「ゲームを忘れさせる」という意味ではなく
「楽しいことの選択肢を増やす」という支援です
ゲームしか楽しみがない状態と
ゲームも好きだけど
「外遊びも好き」
「友達とカードゲームするのも好き」
「料理も好き」
という状態では
本人が選べるものの数が違います
僕はこの
「選択肢を増やす」
という考え方を大切にしています
「ほめる」の目的はゲームをやめさせることではない

ゲームで「勝った」「クリアできた」と感じると
脳の報酬系が刺激され、その過程にドーパミンが関わります
ドーパミンは単に「楽しいときに出る物質」ではなく、報酬への期待や「もう一度やりたい」という行動の学習・動機づけにも関わる神経伝達物質です
久里浜医療センターでも、ゲームによるワクワク感や多幸感には脳内報酬系が関係すると説明されています
一方、現実生活の中で役割を持ち、ほめられたり感謝されたりする経験を増やすことも大切です
ただし
ほめることでゲームへの欲求を直接減らせる
という単純な関係ではありません
子どもの良いところや
ゲーム以外で頑張っていることに気づいて
自然に反応することは大切だと思います
たとえば
- 「言われなくても自分でやめられたね」
- 「宿題を先にやったんだね、すごいね」
- 「弟に貸してあげたんだ、やさしいね」
など、ゲームをしていることを否定するのではなく
本人ができている部分を見る
ということです
僕自身、児童支援では
「できなかったところ」だけではなく
「どうすればできたのか」
「すでにできている部分は何なのか」
を見ることを大切にしています
ゲームについて考えるときも同じです
家庭のルールは「一方的に決める」より一緒に考える

とはいえ
家庭の中で何のルールもなく
好きな時間に好きなだけゲームをする
という状態が良いとは限りません
家庭ごとにルールを作ることも大切です
日本小児科医会も
子どもとメディアについて
親子でルールを考えることなどを啓発しています
大切なのは
親が突然
「今日から1日1時間!」
と宣言して終わりにしないことです
できれば本人も一緒に考えます
たとえば
- いつゲームをするか
- 何時に終えるか
- 食事中はどうするか
- 宿題との順番
- 寝る前はどうするか
- オンラインゲーム中に終わる時間が来たらどうするか
- 休日はどうするか
- 課金はどうするか
など、具体的にしておくと分かりやすくなります
発達に凸凹がある子の場合
「ほどほどにしよう」
「やりすぎないようにしよう」
という曖昧な約束より
具体的に見える形にした方が理解しやすいこともあります
紙に書いたり
ホワイトボードに貼ったり
タイマーを使ったり
本人に合う方法を一緒に探しましょう
僕の家でも、家族とゲームについてのルールを考え、決めたことがあります
我が家には、我が家のルールがある
そして、そのルールを子どもだけに求めるのではなく
家族それぞれが自分なりの約束を持ち、守っていく
そうすると
「我慢しているのは自分だけじゃない」
「人は人、ウチはウチ」
という感覚を持ちやすくなり
家族の中でルールを共有しやすくなります
ただし
家庭ごとに考え方やルールが違うのは当然です
だからこそ
「友達の家はもっと自由なのに」
「どうしてうちだけ?」
と納得できない子どもの気持ちも
まずは受け止めてあげたいところです
ルールを守らせることだけを目的にせず
なぜこのルールがあるのかを家族で話し合い
少しずつ納得できる形を一緒に作っていく
そんな関わりが大切だと思います
ルールを守れなかったときこそ「なぜ?」を見る

「約束したのにゲームをやめなかった」
という場面があったとします
そのときすぐに
「約束を守らない子」と考えずに
少し掘り下げてみましょう
たとえばオンラインゲームの場合
本人だけが自由に止められないタイミングもあります
「あと5分」と言われても
- 対戦の途中かもしれない
- 友達と協力している途中かもしれない
- セーブできない場面かもしれない
といった子ども目線での事情がある場合があります
あるいは、もしかすると
時計を見ていなかっただけかもしれません
そう考えると対策は
「もっと怒る」ではなく
- 30分前に知らせる
- 10分前にも知らせる
- 新しい対戦を始めない時間を決める
- タイマーを使う
などに変わります
できなかった事実だけではなく
できなかった理由を見る
これはゲーム以外の支援でも同じです
ゲームの話をすると毎回ケンカになるなら「散歩」も一つの方法

これは科学的なゲーム依存対策というより
僕自身が家族とのコミュニケーションで使いやすいと感じている方法になりますが
それは
一緒に歩きながら話すことです
「ゲームについて大事な話があります」
と真正面から座って言おうとすると
子どもも
「怒られる」と身構えてしまうことがあります
そこで
「ちょっとコンビニ行こう」
「散歩しようか」
くらいの感じで一緒に外へ出ます
歩きながら
「最近どう?」「ゲーム何やってるの?」など
なにげない会話から始めます
横並びなので
ずっと目を合わせる必要もありません
会話が止まっても
歩いているので変な沈黙になりにくいです
僕は、相談援助では
「向き合う」ことと「寄り添う」ことを使い分ける
のが大切だと考えています
ゲームの問題も
真正面から説得するより
隣に並んで聞いてみる
そんな関わり方が合う子もいます
「向き合う」と「寄り添う」の違いについては、こちらの記事でも紹介しています
相談を受けた人だけで抱え込まないことも大切

たとえば放デイスタッフが、家族からゲーム依存について相談されると
「何とかアドバイスしなければ」
と思うかもしれません
ですが
放課後等デイサービスの職員が
ゲーム障害かどうかを診断することはできません
また、すべてを事業所だけで解決する必要もありません
たとえば
- 昼夜逆転が続いている
- 学校生活に大きな影響が出ている
- ゲームを巡って激しい暴言・暴力がある
- 多額の課金が止められない
- 本人や家族の日常生活に大きな支障が出ている
など
困りごとが大きくなっている場合は
家族だけ、放デイだけで抱えず
医療機関や相談機関などにつなぐことも選択肢になります
ゲーム障害やネット依存について相談・診療を行っている専門機関もあります
久里浜医療センターでは、ゲーム障害・ネット依存などに対応する全国の治療施設リストも公開しています
必要に応じて専門機関につなぐことも
家族支援の一つだと思います
支援者が家族相談で確認したい5つのポイント

支援者として家族から
「ゲームばかりして困っています」
と相談されたときのため
これまで述べてきた情報を
5つにまとめました
① どのくらいゲームをしているか
時間だけで判断せず
平日・休日・時間帯なども確認します
② 生活にどんな影響が出ているか
睡眠、学校、食事、入浴、家族関係などを見ます
③ 本人にとってゲームはどんな存在か
楽しい、友達がいる、得意、安心するなど
ゲームをする理由を考えます
④ ゲーム以外の選択肢があるか
遊び、友達、外出、趣味など
本人が楽しめるものが他にもあるかを見ます
⑤ 家族だけで抱え込んでいないか
家庭でできる工夫の範囲を超えている場合は
学校、事業所、相談機関、医療など
他の支援につなぐことも考えます
まとめ|「ゲームをやめさせる」より、その子の生活を一緒に見る

「子どもがゲームばかりしています」
という相談を受けると
どうしても
「ゲームをどう減らすか」に意識が向きがちです
でも
福祉の支援者として考えたいのは
ゲームをたくさんしているという事実だけに目を向けるのではなく
その子を中心として
- なぜゲームをしているのか
- ゲーム以外ではどんな生活をしているのか
- 何に困っているのか
- 何を楽しんでいるのか
- 家族は何に困っているのか
など、そこまで含めて考えることが
家族支援だと思います
ゲームを悪者にする必要もありません
かといって
生活への影響が大きくなっているのに
「好きなことだから」
と放置する必要もありません
大切なのは
ゲームをする・しないの二択ではなく
その子が生活の中でゲームとどう付き合っていくかを一緒に考えることです
放課後等デイサービスでは
家庭だけでは見つけにくい
- その子の得意なこと
- 友達との関わり
- ゲーム以外の楽しみ
- 普段は気づかれにくい「できていること」
を見つけられることがあります
それを家族へ伝えていくことも
僕は大切な家族支援の一つだと思っています
最後まで読んでくださった方
ありがとうございました



