「ずっと走り回っている」

「高いところに登りたがる」

「ジャンプや押し合い遊びが好き」

「大きな音や人に触られることを嫌がる」

児童発達支援や放課後等デイサービスで子どもたちと関わっていると、こうした姿を見ることがよくあります

一見すると
単に「落ち着きがない」
「この遊びが好き」
と見えるかもしれません

しかし
子どもの行動を考えるうえで知っておきたい視点のひとつが「感覚」です

僕自身
児童発達支援や放課後等デイサービスの現場で子どもたちと関わってきましたが
感覚について知ることで

「この子は、なぜこの動きを何度もするんだろう?」

と、行動の背景を考える視点が増えました

背景を考え、知ることで
その子の心身の状態や
欲するものの想像ができ
支援の手立ての引き出しが増えたと感じています

この記事では
難しい感覚統合の理論を深掘りするのではなく

  • 子どもに関係する7つの感覚
  • 前庭覚・固有受容覚とは何か
  • 子どもの行動をどう見るか
  • 遊びの中で感覚を取り入れる方法
  • 支援するときに注意したいこと

を、福祉現場で働く支援者向けに分かりやすく紹介します

結論から言えば
大切なのは「感覚刺激をたくさん入れること」ではありません

目の前の子どもの反応を観察しながら
その子に合った遊びや環境を考えることです

療育を行う方はもちろん
子育てをしている方にも
引き出しが増える内容となっていますので
ぜひ参考にしてください

そもそも「感覚刺激」とは?

「感覚」と聞くと

  • 視覚
  • 聴覚
  • 嗅覚
  • 味覚
  • 触覚

という「五感」を思い浮かべる人が多いと思います

児童支援では、それに加えて

  • 固有受容覚
  • 前庭覚

にも注目してみましょう

つまり

五感+前庭覚+固有受容覚=7つの感覚

という考え方です

特に身体を使った遊びを考えるときには
前庭覚と固有受容覚を知っていると
子どもの行動を見る視点が増えてきます

前庭覚とは?

前庭覚は、簡単に言えば

「身体の傾きや動き、スピードなどを感じる感覚」
です

例えば

  • ブランコで揺れる
  • 走る
  • ジャンプする
  • 回転する
  • 坂道を上り下りする
  • バランスを取る

といった活動には、前庭覚が関係しています

公園で何度もブランコに乗ったり
走り回ったり
ジャンプを繰り返したりする子もいますよね

ただし
「走り回っている=前庭覚が不足している」
と単純に決めつけることはできません

その日の気分
楽しいから
周囲が気になるから
活動が分からないからなど
行動にはさまざまな理由が考えられます

感覚は
子どもの行動を理解するための「ひとつの視点」
として考えてみましょう

固有受容覚とは?

固有受容覚は

「筋肉や関節などから、自分の身体の状態や力加減を感じる感覚」
と考えると分かりやすいです

例えば

  • 重い物を持つ
  • 物を押す
  • 物を引っ張る
  • よじ登る
  • 踏ん張る
  • 手で強く握る
  • 四つ這いになる

といった活動では、筋肉や関節をしっかり使います

子どもの遊びで考えると

押す・引く・持つ・登る・踏ん張る

などの動きがポイントです

特別な遊具がなくても取り入れやすいため
児童福祉の現場でも意識しやすい感覚だと思います

感覚の感じ方は子どもによって違う

ここが非常に重要です

同じ刺激でも、感じ方は子どもによって違います

例えば
ブランコが大好きで
「もっと高く!」と喜ぶ子がいる一方で
少し揺れただけでも怖がる子もいます

大きな音を楽しめる子もいれば
耳をふさいで苦痛を感じる子もいます

触られることを喜ぶ子もいれば
突然触られることが苦手な子もいます

つまり
「この刺激は子どもに良いからやろう」
ではなく

「この子は、この刺激をどう感じているだろう?」
という視点が大切です

感覚刺激への過敏さがある場合には
努力や慣れだけでは対応が難しいこともあります

無理に刺激へ慣れさせようとするのではなく
まず本人の反応を観察して環境を調整していきましょう

子どもの行動を「感覚」という視点から見てみる

例えば
机上活動中、何度も立ち上がって走る子がいたとします

そこで
「座って!」
と注意するだけではなく、一度考えてみます

「なぜ立ち上がるんだろう?」
「活動内容が分からない?」
「待ち時間が長い?」
「身体を動かしたい?」
「周囲の音が気になる?」
「何か別の刺激を求めている?」

原因は一つとは限りません

その中の選択肢のひとつとして
「感覚の影響があるのかもしれない」
と考えられるようになると
支援の引き出しが増えます

気を付けたいのは
感覚だけですべての行動を説明しようとしないことです
あくまでも視点の一つとして考えましょう

遊びの中に感覚を取り入れてみよう

感覚を意識した活動というと
専門的な器具や特別なプログラムを想像するかもしれません

しかし
普段の遊びにも身体を使う要素はたくさん含まれています

僕が特に意識しやすいと思うのが
次の4つです

①走る

例えば

  • 鬼ごっこ
  • リレー
  • しっぽとり

などです

走ることで全身を使い
身体の動きやスピードを感じる活動になります

ただ走るだけでも遊びになりますが

「色をタッチして戻る」
「宝物を取ってくる」

など
簡単なルールを加えると活動の幅が広がります

②ジャンプする

例えば

  • ケンケンパ
  • 縄跳び
  • マットへのジャンプ
  • ラインを飛び越える
  • 両足ジャンプで進む

などがあります

「ジャンプする」という同じ動きでも
遊び方を変えればさまざまな活動を作れます

③踏ん張る

意外と遊びに取り入れやすいのが「踏ん張る」動きです

例えば

  • 綱引き
  • 坂道を登る
  • 四つ這いで進む
  • 動物歩き
  • バランス遊び

など

全身を使って身体を支える活動を考えてみましょう

④押す・引く

例えば

  • 大きなボールを押す
  • 箱を押して運ぶ
  • ロープを引っ張る
  • タオルを引っ張り合う
  • 荷物運びをゲームにする

などがあります

「押す」「引く」は、遊びだけでなく日常生活の中にも取り入れやすい動きです

「走る・ジャンプ・踏ん張る・押す」を組み合わせる

一つひとつを別々に考えなくても大丈夫です

例えば、簡単なサーキット遊びなら

走る
↓
線をジャンプ
↓
マットを四つ這い
↓
大きなボールを押す
↓
ゴール!

という流れを作れます

これだけでも、さまざまな身体の動きを経験できます

そして何より重要なのは

子ども自身が「楽しい」「もう一回やりたい」と思える活動にすること

支援者が「感覚刺激を入れなければ」と考えすぎて
子どもに活動を押しつけてしまっては本末転倒です

感覚のために遊ぶのではなく、楽しく遊んだ結果として、さまざまな感覚や身体の動きを経験できる

現場では、このくらいの考え方から始めると取り入れやすいと思います

「もう一回やりたい」の大切さについては
ゲーム依存の別記事の中でも書いていますので
参考にしてみてください

感覚刺激を取り入れるときの注意点

ここは必ず押さえておきたいポイントです

感覚刺激は
「たくさん入れれば良い」ものではありません

子どもによって感じ方は違います

特に

  • 強く嫌がる
  • 怖がる
  • 耳をふさぐ
  • 逃げようとする
  • 表情が硬くなる
  • 興奮が強くなる
  • 活動後に明らかに不安定になる

などの反応が見られた場合には
刺激の種類や強さ
活動そのものを見直しましょう

「慣れれば大丈夫」
「みんな楽しんでいるから」
と無理に続けないことが重要です

また
個別の感覚特性に対して専門的な介入を行う場合は
支援者個人の判断だけで進めるのではなく
作業療法士などの専門職や他職種と情報共有し
評価に基づいて考える必要があります

観察する
↓
仮説を立てる
↓
チームで共有する
↓
活動を試す
↓
反応を見る

この繰り返しが大切です

レクリエーションの企画や実施に不安がある方へ向けた別記事もありますので
参考にしてみてください

「問題行動」ではなく「なぜ?」と考えてみる

児童支援では

「落ち着かない」
「ずっと動いている」
「同じことを繰り返す」
「参加してくれない」

といった行動に困ることがあります

もちろん
安全の確保や集団活動を成立させるため
声をかけなければならない場面もあります

それでも
「やめさせるにはどうしたらいい?」
だけではなく

「なぜ、この行動をしているんだろう?」
と一度考えてみてください

その理由を考えるための材料のひとつが「感覚」です

感覚だけですべてを説明することはできません

だからこそ

感覚・環境・コミュニケーション・活動内容・本人の気持ち・体調
など
さまざまな方向から子どもの姿を見ていくことが大切です

対人援助の技術として
「向き合う」「寄り添う」についての考え方を書いた別記事もありますので
参考にしてみてください


まとめ|感覚を知ると、子どもの行動を見る視点が増える

児童支援で感覚について知る目的は
「感覚刺激をたくさん与えること」
ではありません

大切なのは
「この子は、なぜこの行動をしているんだろう?」
と考えられる視点を増やすことです

走る
ジャンプする
押す
引っ張る
登る
揺れる

こうした何気ない遊びにも
さまざまな感覚や身体の動きが関係しています

ただし
感覚の感じ方は一人ひとり違います

「この遊びが良いから全員にやる」ではなく
「この子に合っているだろうか?」と考える

そして
自分だけで判断せず
必要に応じて作業療法士などの専門職や同僚と相談する

子どもの反応をよく見ながら

安全に、楽しく、その子に合った活動を考える

感覚についての知識は
そのための「支援の引き出し」のひとつとして活用していきましょう

最後まで読んでくださった方
ありがとうございました

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