福祉の対人援助|「できること」を奪わない支援とは?本人が参加できる余白を残そう
福祉の仕事をしていると
支援の現場の中で
「困っているなら助けてあげたい」
「時間がないから、こちらでやってしまおう」
と思う場面がたくさんあるのではないでしょうか?
もちろん
できないことを支えるのは福祉職の大切な役割です
でも
支援者が全部やってしまうことが
本当にその人にとって良い支援なのでしょうか
僕は介護・障がい・児童福祉の現場で15年以上働く中で
利用者さんの
「できないことを支える」と同時に
「できることを使える余白を残す」
ことを大切にしてきました
たとえば
排泄後の処理は難しくても水を流すことはできる
移乗には介助が必要でも
自分の手で手すりを握ることはできる
言葉で伝えるのが難しくても
表情やハンドサインで意思表示できる
この小さな「できる」を支援の中に残すだけでも
本人はただ介助を受ける人ではなく
自分自身の生活に参加する人でいられます
この記事では
本人の「できること」を活かしながら支援するための考え方を
具体例とともに紹介します
難しい技術ではありません
結論はシンプルです
全部やってあげるのではなく
本人が自分でできる「余白」を少しだけ残してみましょう
すべてを手伝わず
本人が自分でできる「余白」をうまく活用することで
支援をする側、受ける側
双方にとって心身の負担が軽減されるときがあります
ぜひ参考にしてください
「できないことを助ける」だけが支援ではない

福祉の現場では
利用者さんの「できない」「困った」を支援する場面が多くあります
たとえば
- 移動や移乗の介助
- 排泄介助
- 食事介助
- 意思表示のサポート
- 気持ちを整理をサポート
- 活動参加へのサポート
などです
当然、必要な介助は行わなければなりません
ただし
ここで注意したいのが
「できない部分がある」=「全部できない」ではない
ということです
支援者が効率を優先してすべてやってしまえば
その場は早く終わるかもしれません
しかし
その人が本来持っている力を使う機会までなくしてしまう可能性があります
だからこそ
「どこを支援するか」だけでなく
「どこは支援しないか」
を考えることも大切な援助技術だと思っています
①まず「できないこと」と「できること」を分けて見る

最初に、その人の状態をよく観察します
このとき
「何ができないか」だけを見るのではありません
「どこまでなら自分でできるのか」
まで考えてみます
たとえば
できない:一人で安全に移乗すること
できる:手すりを握る、足に力を入れる
できない:排泄後の処理、保清
できる:水を流す、衣類を整える
できない:言葉で要求を伝えること
できる:指差し、表情、ハンドサイン
このように細かく分けてみると
「できない人」
ではなく
「ここは難しいけれど、ここならできる人」
という見え方に変わってきます
②「できない部分」はしっかり支える

もちろん
本人だけでは難しい部分を無理にやってもらう必要はありません
安全性や本人の負担を考えながら
必要な部分は支援者がサポートします
たとえば
- 身体を支えて安全に移乗できるようにする
- 難しい排泄動作を介助する
- YES・NOで答えられるよう質問を工夫する
- 短く分かりやすい言葉で伝える
- 気持ちを表現しやすい環境を作る
などです
ここで大切なのは
「自立支援だから全部自分でやってもらう」ことではない
という点です
できないことまで無理に求めれば
それは本人にとって負担になってしまいます
必要なところは支える
でも、必要以上には奪わない
このバランスを考えていきます
③本人が「自分でできる余白」を残す

ここがこの記事で一番伝えたいポイントです
支援者が介助するとき
本人が自分の力を使える場面を一つ残してみます
たとえばトイレ介助なら
支援者が必要な介助をする
↓
最後に本人が水を流す
移乗介助なら
支援者が身体を支える
↓
本人にも手すりを握ってもらう
↓
可能な範囲で自分の足に力を入れてもらう
コミュニケーションなら
支援者が先回りして答える
のではなく
少し待つ
本人が表情、視線、指差し、言葉、ハンドサインなどで意思を示せる時間を作ります
僕の中ではこれを
「自分でできる余白を残す」
と考えています
支援者が100%完成させる必要はありません
最後の10%でも、5%でも構いません
本人が参加できる部分を残しておく
それだけでも
支援の形は変わってきます
「待つ」ことも立派な支援になる

現場ではこれが意外と難しいです
業務に追われて忙しいと
「自分でやった方が早い」
と思ってしまいます
ボタンを留めるのに時間がかかっている
靴を履くのに時間がかかっている
言葉が出てくるまで時間がかかっている
そんなとき
つい支援者が手を出したくなります
もちろん時間や安全上の制約もあるため
いつまでも待てるわけではありません
それでも
「この人なら、あと少し待てばできるかもしれない」
という場面では
あえて手を出さないことも支援になります
何かを「する」だけが援助ではありません
見守る、待つ、任せる
これも大切な対人援助の選択肢です
利用者さんの気持ちを考える視点で
「向き合う」「寄り添う」の活用という
対人援助技術の別記事もありますので
参考にしてみてください
④できたことに対して自然にポジティブな反応する

本人が「できること」を使ってくれたら
支援者も反応しましょう
「ありがとうございます」
「助かりました」
「自分でできましたね」
など
場面や相手との関係性に合わせた言葉で十分です
ただし
何でも大げさに褒めれば良いわけではありません
特に成人への支援では
子ども扱いするような声かけにならない配慮も必要です
大切なのは
支援する側・される側という一方向の関係だけにしないことです
本人が何かをしてくれたことで支援者も助かったのであれば
「ありがとう」
と自然に伝える
そんなやり取りがあることで
対人援助は少し柔らかいものになると思います
「できること」は固定しない

もう一つ注意したいことがあります
一度「できる」と判断したことが
いつでもできるとは限りません
昨日できたことが
今日は難しいかもしれません
逆に
以前できなかったことが
今日はできることもあります
高齢者なら
体調や認知機能、疲労などの影響を受けます
障がい福祉や児童福祉でも
気持ち、環境、感覚、見通しの持ちやすさなどによって行動は変わります
そのため
「この人はこれができる」
と固定して考えるのではなく
「今日はどこまでできそうかな?」
と、そのときの状態を見ることが大切です
感覚刺激の視点で
子どもの行動を『なぜ?』から考える記事もあります
参考にしてみてください
「できること」を残すために支援者ができる5つのこと

現場では
次の5つを意識すると「余白」の活用が実践しやすくなります
- できないことだけでなく、できることを探す
- 難しい部分は無理をさせず支援する
- 本人が参加できる部分を一つ残す
- すぐ手を出さず、少し待ってみる
- できることは日によって変わると考える
特別な道具や高度な技術が必要な方法ではありません
普段行っている支援の中で
「ここ、本人にやってもらえるんじゃないかな?」
と一度考えてみるだけでも始められます
支援とは「してあげること」だけではない

福祉の対人援助では
支援者が上で
利用者が下という関係ではありません
また
「できないから、やってあげる」
だけが支援でもありません
本人には本人の力があります
支援者の役割は
その力をすべて代わりに使ってしまうことではなく
必要なところを支えながら
本人が自分の力を使える環境を整えること
そのためには
手をさしのべることよりも
あえて手を出さないこと
の方が難しい場合もあるかもしれません
まとめ|「自分でできる」の余白を少し残してみよう

対人援助で大切なのは
できないことを支えることと
できることを奪わないこと
この両方だと思います
全部を自力で頑張る必要はありません
一人で移乗できなくても
手すりは握れる
排泄介助が必要でも
水は流せる
言葉で伝えられなくても
表情や指差しで意思を示せる
そんな小さな「できる」を見つけて
支援の中に残してみてください
支援者が100%やってしまわず
本人が参加できる余白を用意する
「できないこと」だけを見るのではなく
「この人が自分でできることは何だろう?」
と考える
その小さな視点の変化が
本人の力を活かす支援につながっていくと思います
みなさんの支援の引き出しが
少しでも増えていたらうれしいです
最後まで読んでくださった方
ありがとうございました



