身体拘束のグレーゾーン 尊厳を守れ
福祉の業界で利用者対応をしていると、常に「権利擁護」「虐待防止」というキーワードがどの場面でも頭をよぎることになります
「これはOK?」「これはアウト?」のような検討が、現場でも、会議の場でも、研修の場でも念頭におかれます
同時に「グレーゾーン」という言葉も飛び交います
身体拘束や虐待防止については各福祉事業を行う施設で、定期的な研修や勉強会が義務付けられています
ですが、なかなか改善されず、良くも悪くも状態は「現状維持」という施設が多いのではないかなと思います
今回は、虐待防止や身体拘束の「グレーゾーン」について
基本の解説とともに
最終的には何を根拠として虐待防止を考えていかなければならないか
解説をしていきます
読んでいただけることで
虐待の事例について
・報告の出し方
・検討の仕方
・結局何を根拠として結論を出すか
といった悩みが解決されていきますので
参考にしてみてください
虐待防止 身体拘束 基本の理解 解説

「権利擁護」→利用者さんの【権利】を理解して、それをジャマしてはいけないよ
「虐待防止」→身体的にも精神的にも、利用者さんを傷つけてはいけないよ
というものです ざっくりですが
そして、「虐待」に定義づけられるものの中に、「身体拘束」というものが存在します
利用者の、持っている権利の侵害(物理的な動きの阻害)は、虐待になるよ
というものです これもざっくりですが
さらに、この「身体拘束」は原則禁止とされますが、特定の要件を満たすと、例外的に「認められる」とされます
この「認められる」の所が、解釈次第で非常に「グレーゾーン」となり、人権問題の視点で危険であり、職員の意識やモラルによって変動しやすいところが大きく、結果として、「虐待防止」や「権利擁護」の対策は改善に足踏みをしているのだと、僕は感じています
この特定の要件とは何か それは
「一時性」(一時的なものであること)
「非代替性」(替えの案が無いこと)
「切迫性」(非常に差し迫って命の危険があること)
です
これらが満たされていると、「身体拘束」は、例外的に「認められる」とされます
特に、「非代替性」「切迫性」のところに注目したいです
問題提起

例えばですが
他に道具が無く、
放置すると命の危険があるから、
利用者の体をロープで縛った
という状況説明は、どう解釈されるでしょうか?
「人権侵害だ」という声もあれば
「やむを得ない判断だ」という声もあるでしょう
そしてその議論は、おそらく平行線で答えは出ないでしょう
では、施設等で働く現場の職員たちは、どうしたら良いでしょうか?
どうするか 答えはある

この状況、正解のない問題について、議論をすることに意味はない、とまでは言いませんが、長く議論しても時間の浪費になります
よくよくひも解いて
なぜ「グレーゾーン」となるのか
なぜいつまでも同じ議論が続くのか
を考えましょう
先ほどの
「他に道具が無く、放置すると命の危険があるから、利用者の体をロープで縛った」
のシチュエーションを例として考えます
この状況説明ですが
一見行動は正当性が高く、妥当に見えます が
非常に書き手の主観が入っていて、あいまいな解釈を生んでいます
まずはもう少し説明に具体性を持たせましょう
「他に道具が無い」については
周辺1メートル、視界に入る位置には
適切といえるものが存在しなかった
「命の危険がある」については
両腕を振り回しており
近くの棚に花瓶があった
他者や本人に落下し直撃する可能性が高く
非常に危険だったと判断されるため
このくらいまで具体的に書く必要があります
これだけでも正当性への判断はつきやすくなりますが
まだ是か非か、判断をするに足りない要素があります
ここで「権利擁護」の視点に立ち返ってください
具体的な状況説明があったうえで
「ロープで縛る」事が妥当かどうか
「ロープで縛る」事は、かなりその人の「動く権利」を奪う行為ですよね
それが、本当に妥当な対応なのか
それを考えるのには
「尊厳を守る」のキーワードが非常に大事です
「その利用者さんは、きっとこうしたいだろうな、そのために動きたいんだな、でも、危険だな」という判断で、「ロープで縛る」事は妥当なのか
これを、そこそこの事業所の中で、徹底的に議論をするべきです
「だったら、、、仕方ない」という判断で、身体拘束を例外的にそのケースだけ認めるか
改善すべき行動、別の方法案、物の配置等を今後どうするか
虐待防止の行動意識、環境改善は、それで進んでいくはずです
それが事業所の理念として根付いていき、スタッフの代替わりがあっても受け継がれていく意思となれば、利用者にとっても素晴らしい事業所になっていくと思います
尊厳を守る事

虐待や身体拘束は、テーマとして重たいものであるがゆえに、是か非かに線引きをしたくなります
これはダメ、これはOK の明確なルールがほしいよ
というのがスタッフの気持ちでしょう
ですが、この件に関して、その思考があまりよくないです
一度「利用者の尊厳を守る」ことが大事という
介護士や支援員の基本理念を考え起こしてください
【尊厳を守る】って、人によって感じ方は違うし、あいまいでグレーゾーンを生むんじゃない?
と考えそうですが
この「尊厳を守る」がベースにあった方が、改善策ははるかに生みやすいです
そして「尊厳を守る」の考え方は、利用者主体で考える事が重要です
例えば先ほどの
「他に道具が無く、放置すると命の危険があるから、利用者の体をロープで縛った」
の事例で、利用者の家族が、「ロープで縛った事」について「人権侵害だ!」と訴え裁判を起こしたらどうなるでしょう
そしてそれが仮に「無罪」となったとき、根拠はどこにあるでしょうか
おそらく、裁判員が客観的に状況を判断し、「利用者の人権侵害にはあたらない。妥当な対応だった」と判断して、「無罪」となるはずです
この判断材料は「利用者の尊厳を侵しているか、守られているか」が争点になっています
裁判になって判決を下す際も、「尊厳がどうか」で判断をするのですから
事業所の身体拘束に関する是か非かも、「尊厳を守る」事を念頭に置くのが正しいと考えられます
まとめ
虐待防止や身体拘束
福祉の業界では非常に重いテーマで、事件や事故がよく起きています
これについては「一度考えたらOK」ではなく
常に情報や知識をアップデートする必要があり
忘れないために定期的に自身の行動を見直すことが重要です
そのうえで
・身体拘束のグレーゾーンは、あるもの
・それに対しての答えは、ちゃんとある
・「尊厳を守る」の意識が、ベスト
の3点を頭にいれておいてほしいです
正解のない議論を延々とするのではなく
正解に近づくという感覚で
アップデートされた知識や情報を
新規で入職するスタッフに繋いでいき
よりよい理念から根拠をもって自信を持ち
安心して働けるような職場環境になってほしいと考えます
参考になるとうれしいです
最後まで読んでくださった方、ありがとうございました


